皆さんはサメと聞くとどのようなことを想像しますか? 海の怖い生き物? ジョーズ? テーマパークのアトラクションの一つ?? と言うようにサメへの恐怖をイメージする方が多いと思います。
それは昔の映画や人を襲ったという事故のニュースが流れているのを見たからと思います。
日本ではサメによる被害は年間で1回あるか無いか程度。世界では、米国フロリダ、次いでオーストラリア(年間10~20人)でサメ被害が多く、2014年の春には西オーストラリア州政府がサメ駆除作戦を決行し、3ヶ月間に渡って172匹のサメを確保するぐらい、多くの被害に遭っています。未来科学研究所はオーストラリアのウェットスーツメーカーや大学とタッグを組み、サメ回避プロジェクトを開始しました。
サメが獲物や危険を察知する順番は、まず数km先に及ぶ範囲での聴覚、そして、嗅覚を頼りに接近し、近距離になって視覚で確認をし、最後に触覚でキャッチするのです。それが獲物かどうかは味覚で味わってから分かるとも云われています。 では、どこでサメに回避してもらうかがポイントとなります。最初の聴覚や嗅覚の範囲では、人の方が先にサメの存在に気が付く確率は低いと思われます。 そして、最後の触覚に至るまで接近してしまうと、あまりにもリスクが高くなります。そこで視覚に対してサメを回避できる術を考えました。
ただ、1つ問題が出てきました。 ウミヘビの生息域は水域の浅いところ。光があまり届かない水深の深いところではウミヘビが存在しないと理解してしまうのか、ストライプ柄が見分けが付きにくいのかが原因でサメの反応が悪くなる問題点が出てきました。そう、ウミヘビ柄はサーファーなどの方には効果があっても、ダイビングをする方などにとっては、場合によってサメの回避率が下がってしまうのです。 しかし、ウミヘビのようにサメが天敵と感じる海中の生物は滅多におらず、海中ではシャチぐらいで、それはあの図体とパワーがあっての天敵です。
そこで原点に帰って考え直しました。山本化学工業が作る素材のゴムにはそのまま使うものもあれば、様々なカラーを持ったジャージ(繊維)を貼って作るウェットスーツもあります。その中にはカモフラ柄(いわゆる迷彩柄)のものもあります。これはスピアフィッシングという海底の岩陰などに隠れて水中銃で魚を捕まえる漁をするために作られた柄です。
これがヒントとなりました。
とは言え、さすがにサメを発見してから、サメより速く泳いで海底の岩に隠れる訳にはいきません。 そこで、海中でのカモフラ柄として、海のゆらめきをイメージさせる濃淡の青色を3色を不規則に組み合わせた素材を何パターンか制作しました。その素材で実験すると、サメは何が起きたか分からないようなパニックを起こして、引き返してしまいました。 こうして出来たのが、ダイビング用のサメ避けウェットスーツです。
同じ地球に生まれた生命体として、闘うのではなく、お互いが世界の海を危険無く楽しめ、共存共栄ができるウェットスーツとして一役買えればと思います。