放射線には様々な種類があります。よく知られているのが病院で体の内部を写すX線。そしてそれよりも強いのがガンマ線。他にはアルファ線、ベータ線、中性子線などがあります。

あの東日本大震災による原発の事故で問題となったのが、ガンマ線で、汚染水で問題となったのがベータ線です。
何故問題なのか、、、それは人体に影響を及ぼすからです。放射線を人体が浴びることを被曝といいます。当然ながら医療にも使われていたり、普段私たちが生活しているだけでも浴びているので、ある一定レベルであれば問題はありません。しかし、この事故では桁違いの放射線が確認されました。

遮蔽(しゃへい)という言葉は知っていますか?分かりやすく言えば「遮断する」ということです。放射線による人体の被曝を避けるためには、遮断をする必要があります。


この遮蔽は放射線の種類によっても異なり、ベータ線はアルミ板でもさえぎることが出来ますが、ガンマ線では不十分で、ガンマ線を止めようと思えば、何十cmというコンクリートの壁が必要であったり、重金属と言われる金属の中でも非常に重たい金属を使用しなければなりません。

ガンマ線などの放射線は例えば壁にぶつかれば、その一部は反射します。その放射線を散乱線といい、放射線が出ている元(線源という)に向けてのみ遮蔽物を置いても、自分の後ろの壁や天井に当たって跳ね返ってくる散乱線によっても被曝してしまいます。
放射線や散乱線は、簡単に見えるものでは無いので、十分に気をつけて被曝を防ぐための対処が必要となります。




被曝しないようにするためには、全身を遮蔽材で覆えばいいのですが、意外とそれは簡単なことなのではないのです。数cmのコンクリートを身にまとうわけにはいかないですし、重金属を用いた遮蔽材で全身を覆えば30kg近くにもなり、またそれで服を作ったとしても、硬くて動くことすら出来ません。放射線の線量が高いところでの作業は、遮蔽も必要ですが、短時間で作業が出来るように動きやすい素材で遮蔽服を作る必要があります。

様々な分野で、柔軟で頑丈で軽量化されるモノの中は、素材をハニカム構造という蜂の巣のような構造体にされています。重金属をハニカム構造の素材に分散させ、柔軟性を持たせることで、通常よりも動きやすい素材になります。

また思わぬ発見は、このハニカム構造は素材自体に無数の部屋を作ることになり、放射線を各部屋を通る度に散乱させ続けて、より遮蔽効果を持つということです。

しかし、いくら柔軟な素材であっても放射線を遮蔽する重金属を多く含むと全身を覆っても重たくなり、作業性に欠けてしまいます。そこで近畿大学原子力研究所の協力を得て、人体にとって放射線の影響の受けやすい部位を重点的に覆うことにしました。

 

また、素材自体のメンテナンスが容易である、つまりメンテナンスフリーであるモノであることが重要です。重金属を使用している素材の場合、時間が経つに連れて、重力により垂れ下がってしまうことがあります。その垂れが起きないようにヤマモト未来科学研究所は、そのハニカム構造のゴムに均一に重金属を分散させることに成功しています。